媒体学:山田 亘

球殻の空(変換後)
1964年愛知県名古屋市生まれ
写真家・メディア表現 PACell代表  アートセンター[Yojo-Han]ディレクター 日本紙媒体学会常任理事
名古屋芸術大学、名古屋造形大学、日本デザイナー芸術学院等で兼任講師
MFA (photography) Ohio University 米国 州立オハイオ大学 芸術学修士(写真)
BFA(photography) Ohio University 米国 州立オハイオ大学 芸術学学士(写真)

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Q:普段の活動はどのようなものですか?

大学、専門学校の他、自ら運営するスクールも含めた様々な教育機関で「写真作品の制作」「写真史」「写真という方法についての考察」「機材使用の実際」「写真によるコミュニケーション」等について、様々なレベルでの写真教育に教員として関わってきています。アーチストとして近年は写真媒体を活用し「不在–いないこと」の表現をテーマとした一連の作品発表を行ってきました。また、それと平行して、意味を伝達するために人が作り上げてきた古くから存在する媒体の機能や社会的な意味付けの再評価をする紙媒体プロジェクトや声の採集によるサウンドインスタレーションなども積極的に行っています。そのことから「映像制作」「雑誌、紙媒体の制作」といった分野の教育にも関わるようになってきました。
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Q:各自の研究(活動)にとって,今回のプロジェクトや展覧会は,どのような位置づけにあるのか?

元々「不在」という目に見えない意味を映像化、音声化することを探求する活動をしてきた上で、更に大きな枠で姿を持たず人の頭の中にしか生まれない「意味のようなもの」を伝達していく「媒体」の基本の姿を模索する試みとなると考えています。私の言う「媒体学」は特定の媒体に限定した表現をもう一つ外側からみて、それぞれの媒体が持つ「機能」や、社会の中で持つ「位置づけ」に着目し研究していくこととしています。今回は媒体の物質性や機能そのものも重要ではあるが、意味や概念を長く広く伝えるためには社会組織や制度といった「しくみ」が必要となるという点に注目し、仕組みそのものを研究の土台として構築し運営することも媒体として位置づけるという試みとなっています。
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Q:今回の自分の展示はどのようなものになりそうですか?

本展の展示においては「紙媒体」と「学校」を例にとっています。数千年単位で人類が膨大な種類や量の意味を伝えるための媒体として世界各地で活用してきた紙媒体についての研究は、それによって媒介されるあらゆる意味内容をも内包しています。この研究ひとつとっても一個人の能力を十分に超えていると考え、本質的な解答や研究を遂行するための組織そのものをこの研究のための礎として構築し「社会の中に存在し機能する研究組織を作る作品」として提示することで「しくみ」そのものが媒体であるということを示そうとしています。また学校は様々な媒体を活用して意味を世代を超えて伝達しようとしていますが、学校制度や教室自体、そしてそこで行われる教育そのものを媒体そのものとして位置づけることもできると考えそれを示唆するようなインスタレーションを考えています。

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Q:来場される方へ向け一言

研究ってなんとなくこんな感じかしらという感じを楽しみながらも本質の探求を行っていこうとしています。作家とか哲学者とか言っても学者の研究をビジュアル化したり西洋の哲学者が考えたことの解釈に終始していることもまれではありません。大学研究者が必ずしも本質的な研究をしていない場合もある反面、研究とは無縁を思われている現場で行っている考察の方が本質的な研究になっている場合も多くあると考えます。研究という位置づけも一つの媒体だと私は考えます。この展覧会全体は「研究」という位置づけを使ってそれぞれが「何かの意味」を伝えようとするものです。それぞれの研究ジャンルをつなぎ合わせて、皆さんが何かを考えてしまうような状況を全体で作り出せればと思っています。

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